『ロード・オブ・ザ・リング ローハンの戦い』を観てきました。個人的な評価としては微妙と言わざるとえません。とはいえ私自身は楽しめました。
作画が崩壊している訳ではないのですが出だしの壮大さは雰囲気出ているのですがアニメがちょっと滑らかでない感じす。物語は至って真面目でシリアスなのですが何と言うか「シリアスな笑い」になってしまっています。戦争のシーンは迫力に欠ける感じです。動物好きとしてはムーマクがかわいそう…という感想です。実写の三部作の方が戦争シーンは凄まじいです。
ハリウッド映画でありながら日本風アニメーションであり監督もスタッフも日本人がたくさん関わっている非常に挑戦的なビッグタイトルです。ワーナー・ブラザース・アニメーション制作で原作はロード・オブ・ザ・リングなため吹き替え版と字幕版があります。私は字幕版を観ました。声優さんはどれもしっかりマッチしていて物語に没入できます。
以下、ネタばれあり感想なため読み進める際はご注意ください。
ネタばれあり感想
ロード・オブ・ザ・リング三部作の知識は必要か?
まったく必要ないです。もちろん三部作の設定もとい指輪物語が舞台なので知っていれば地理や文化、生物、歴史ネタでより深く楽しめるかと思います。ですが前提知識として何かを知らないと楽しめないということはないです。ロード・オブ・ザ・リングがあってこの物語があるというより、この物語の舞台設定にロード・オブ・ザ・リングが選ばれてしまったというのがしっくりきます。小説「指輪物語 追補編」に基づくエピソードらしいのですが本作品の内容だけを評してしまうとたぶん舞台設定がエルデンリングだろうがダンジョン飯だろうがどんな舞台でも同じような物語は展開できてしまうという意味ではロード・オブ・ザ・リングならではの強みはあまり感じませんでした。
王様強すぎ問題
ホーラ・ルーかよ!とツッコミたくなるくらい強いです。そもそも主人公ヘラの幼馴染であるウルフが王様を憎み戦争となる原因もヘラの父親であるヘルム王が強すぎることが原因です。
ヘラの王家つまりローハン王家は色々な部族を家臣として従えている訳ですがそのうち1つの酋長、ウルフの父親であるフレカはより権力を得るために無礼にも評議会に乱入してウルフとヘラを結婚させろと迫ります。当然ヘルム王はフレカの魂胆が分かっておりそんなこと認められないと意見が対立します。ヘルム王は殴り合いで決着を付けようと提案しフレカもそれに乗ります。たぶんヘルム王としては家臣たちの目の前でコテンパンにしてどちらが上かはっきりさせることが目的だったはずです。
いざ決闘が始まるのですがフレカの先制攻撃をもろに受けますがヘルム王には対して効いておらずカウンターで一発フレカにお見舞いします。フレカは吹っ飛ばされ、さあ立ち上がってこい!と促すのですが起き上がりません。ウルフがフレカに近づくと「死んでる…」と…見てる側としてはギャグなのかと思いました。😅
ヘルム王も思わず「まだ一発殴っただけだぞ」と困惑します。
当然?というかウルフは逆上して王様に襲い掛かるのですが王様もあっさりウルフをいなしてしまいます。で扱いに困った挙句にウルフを追放してしまいます。うーん…自分で書いといて何ですが無茶苦茶ですね…
中盤で分かるのですがヘルム王は巨大なオークとも素手で渡り合えるぐらい強いので人間程度は拳で殴り殺せるのですね。不幸なのは王様自身が自分がどれだけ強いのか理解していなかったことでしょうか…
作中でも結局誰に倒される訳でもなくヘラを守るために門の前で最後まで戦い続けて凍死という終わり方です。言ってしまえば状態異常による死亡です。ツッコミどころ満載ですが実際そうです。たぶん1対1でこの王様を倒せるのは褪人くらいです。
脚本の手により極限にまで哀れに描かれる敵ウルフ
ウルフは当然、ヘルム王に対する憎しみが凄まじく追放された後は他の蛮族と呼ばれる人々をまとめ上げて巨大な軍隊を作りローハン王家に戦争を仕掛けてくるわけです。正直なところ…序盤は割と同情する面もあって「がんばえー」な感じでしたがなんか微妙に作画の迫力もあまりないせいかウルフ側、つまり蛮族側も大して強そうに見えなかったです。実際陽動とかの作戦が功を制して結果的にローハン王家は砦まで撤退せざるを得なくはなるのですがヘルム王を殺せるわけでもなくそれどころかヘルム王率いる部隊は普通に敵部隊全滅させてるっぽくてこう…何とも言えない感じでした。
しかしこのウルフ、復讐に囚われすぎてすべての選択肢を間違え続けます…
砦までヘルム王を追い詰めた際、ヘラの兄であるハマを人質に取ります。息子を失いたくない一心のヘルム王はなんと降参します。玉座も何もかも譲るから息子を殺さないで欲しいと懇願します。ウルフの超優秀な家臣であるターグ将軍は提案を受け入れるべきだと助言します。厳しい冬になり籠城した砦を落とすコストは凄まじく割に合わないからです。ですがウルフはハマの首を斬ってしまいます。これで砦攻めをせざるを得なくなります。
ヘルム王は経緯はどうあれ劇中で死んでしまうのですがヘラのみなり籠城して飢えた国民しかいないローハン王家にもはや力はなく国はウルフの物なのでもう放っておきましょうとターグ将軍が提案してもヘラに弱みを見せられないという意味不明な理由でウルフは砦崩しにこだわりつづけます。
今までまとめあげていた部族達も厳しい冬に何の利益もない砦攻めに辟易して離脱しようとしていたところを砦には財宝があると言い嘘をついて進軍を続けさせてしまいます。こんな嘘をつけばとんでもないことになるというターグ将軍の助言も無視です。
もう序盤の同情心は消えうせ最後は哀れでさえありました。終盤、ヘラはウルフに対し正々堂々1対1での勝負を申し込みウルフはそれを受けます。ヘラが勝てば民を見逃すという条件です。ですがウルフは普通にヘラに勝てないくらい弱いです…
そもそもウルフはヘルム王を殺すチャンスは何度もあったのにも関わらず肝心なところでビビっていてヘルム王と対決することもできない臆病者でした。ターグ将軍も最後はウルフに呆れて臆病者と指摘し離脱しようとしたところウルフはターグ将軍も殺してしまいます。いよいよ味方もいなくなりヘラに追い詰められた際は降伏する振りをして一瞬の隙を突き剣をヘラに突き立てますがそれもヘラに躱される始末…
最期は剣で殺されるのではなくヘラに覆いかぶされられ盾でそのまま首を圧迫されて死ぬというしょうもなさすぎる最期を迎えます。
いくらなんでもここまで滑稽だとさすがにヘラを活躍させるために用意されたピエロ過ぎて脚本の犠牲者だとさえ思います。まじで良い所なしです。そもそもここまで拗らせてるウルフに他の部族をまとめあげることは到底できなさそうなのでターグ将軍の手腕なのだろうなと思わずにはいられません…顔は良いのだから追放された後どこかでヘラに似た奥さんでも迎えてスローライフを送って幸せになって欲しかったです。😭
(強いて良い所をあげるとヘラを誘拐した際に争わずに済むならあなたと結婚すると提案したヘラを断ったのは正しい判断でしょう。あの時点で婚姻を受け入れたところでヘルム王が許す訳がないので。)
奔放と言う設定なヘラだけど作中では普通に常識人枠だった
主人公だからひたすら画面には出てくるのですがなんかいまいち影が薄い感じです。作中でもどちらかと言えば巻き込まれな訳でして割と適切なことを常に言っています。結果論ではありますがヘルム王もヘラの兄達もヘラの言うことを真剣に聞いていればあそこまで状況は悪化しなかったと思います。味方も敵も勝手に自滅していって最後は自身が戦わなくてはならないという境遇に関しては同情しました。でも彼女もまたヘルム王の子であり戦闘センスが優れているというのも何と言うか…ウルフにとっては不幸です。
主人公だからでしょうかどのカットでも美人過ぎるのが印象でした。誰とも結婚しないと言っていましたがあれだけ優秀だとたしかに男と結婚するメリットなさすぎでしょう。