
「プロジェクト・ヘイル・メアリー」を読了しました!紙の本(小説)をしっかり読み切ったのは学生時代以来です。社会人になってからは時間が確保できないのもありますがパソコンもネットも制限なく触ることが出来るせいでついついそちらを優先してしまいます。
ですが「プロジェクト・ヘイル・メアリー」は洋書の全翻訳でありながら違和感のない文章で物語の展開も飽きず、するすると読み進めることができました。(外出時にカフェで読むのが気づけば楽しみになっていました。)
面白いと話題になっていた事と、今年(2026年)に映画が公開されるらしくたまには紙の本もしっかり読んでみるかと手に取ってみましたが非常に良かったです。映画「オデッセイ」の原作者の最新作という事も手に取る理由になりました。(※ 火星でマット・デイモンがじゃがいもつくるあの映画です。)
以下、感想となりますが感想を書く上でどうしてもどういう物語なのかに触れる上でネタばれにはなってしまうので読み進める際はご注意ください。
ネタばれあり感想
物語の構成が、「現在パート」と「過去パート」が交互に行き来するスタイルです。主人公(ライランド・グレース、以下グレースと呼称)は最初は自分の名前すら思い出せない状態からある空間で目覚め手探りで情報を探っていく現在パート、そしてそれをきっかけとして過去のパートに入りその過去の情報が答えを導き出し現在の状況の理解の助けになります。
この構成がこの「プロジェクト・ヘイル・メアリー」という物語の真骨頂を下巻の終盤にて発揮するのですがそれはそれです。
どのようなSF小説なのかと感想を語る上で少し内容について言及すると、地球では天体観測にてある時期から太陽系内にペトロヴァ・ライン(作中のイリーナ・ペトロヴァ博士から命名されている)と呼ばれる赤外線を放出する不可解な線を見つけます。それとほぼ同時期に日本のJAXAの太陽観測衛星アマテラスも奇妙なデータを取得しました。光度、つまり太陽から放射される光のエネルギーが指数関数的に減少しているというデータでした。
端的に言ってこのままのペースだと太陽からの照射エネルギーが20年で5%減少するというのです。たった5%と思うかもしれませんが…もし太陽から送られてくる光の熱エネルギーが5%も減少したら地球は普通に大氷河期に突入します。早い話が人類(以外も含めて)大絶滅です。
当然のことながらそんなことは避けなければならない…と全世界を叡智を集結させて何が原因かを特定する必要があります。
ペトロヴァ・ラインは太陽から金星まで伸びる巨大な弧でありNASAは急遽、金星観測衛星(無人宇宙船)のアークライトを開発し金星の周回軌道に送り込み、ペトロヴァ・ラインから採取したある動画データを地球に送信します。それは黒い粒子でした。そして何と動いていてそれが生物であるという事が分かります。
ここからグレースが本格的に関わってきます。
グレースは生命の進化に必ずしも水は必要がないという理論を学会で提唱したものの受け入れられず学会から離脱、研究職から転職して教職についた独身のアメリカ人男性です。
しかし…宇宙空間から生命体が発見されたことをきっかけにグレースは全世界からあらゆる実力行使を実行する権限を委任されたエヴァ・ストラットに半ば拉致に近い形というか拉致され金星の周回軌道から採取された黒い生物の正体を研究施設で調べることを強制的に依頼されます。
過程をじっくり記載するともはや感想とは程遠いので結論だけ書くと、それは宇宙の苔とも言える生命体で「アストロファージ」と名付けられました。「ペトロヴァ・ライン」とは「アストロファージ」の群れであり太陽から照射される熱エネルギーを食べていることが判明したのです。グレースは教師となっても研究者としての優秀さは衰えておらずその正体を突き止めることになります。
またアストロファージは胞子のような性質を持ち、かつ一定量の熱エネルギー(E=mc2)を保有し光速で移動することが出来る性質を持つことから星から星へと感染することが判明しました。感染した恒星の八光年以内の星すべてに感染し熱エネルギーを奪うのです。しかし1つだけこのアストロファージの感染していない恒星が確認できました。それがタウ・セチ(クジラ座)でした。
「Starfiled」をプレイしていると目にすることもある星系ですね。
グレースは宇宙船の中で目覚め、宇宙船はまさにタウ・セチに向かっていた…それはアストロファージがなぜタウ・セチには感染していないのか?その原因を探るためにです。
大体ここまでのオチで上巻の40%くらいかと思います。
ここまでも「現在パート」、「過去パート」の行き来で面白く読めるのですがここから先がさらに面白い怒涛の展開となります。
何よりこのSF小説の魅力は「オデッセイ」でもそうでしたが科学的描写に非常にリアリティがあることです。細かい数値計算まで持ち出すため説得力があります。むろんあくまでSFであり後半の展開ではご都合主義な部分がない訳では決してないです。ですが宇宙を考えた時に生物はどう進化するのか、どういう性質を持つのかそういう部分の描写は非常に面白くワクワクしました。
ネタばれになり過ぎるため言及しすぎることはできないのですが、グレースは一人きりで宇宙船では目覚めるのですが問題解決の過程ではバディが出来ます。映画でどのように描かれるのか楽しみな部分です。未知の存在との相互コミュニケーションもこの作品の醍醐味の1つではないかと思います。
そして何よりグレースが少しずつ記憶を取り戻す過程でグレース自身がどのような人物なのか、なぜ彼がこのミッションに携わっているのか…それが明らかになる場面は小説でありながら思わず映像が脳内に思い描けるくらいな衝撃さもあります。
一番良かったのはこの壮大なスペースオペラの終わり方です。最後まで読んだ時の読了感は素晴らしく優れたアドベンチャーゲームを完全にプレイし切った後の放心感かそれ以上に相当しました。
キャッチコピーに「地球<80億人>滅亡。解決策は、たったひとりのーー<中学校の先生>だった。」とあります。中学校の先生の設定をキャッチコピーにするほどでもないよな…と思っていましたが物語の終わり方で伏線を回収する見事な締めで涙腺を刺激されました。
映画が公開されるとのことですがこれは絶対観に行きたいです。

