アリスとテレスのまぼろし工場をさっそく観てきました!
前知識は事前に仕入れることなく観に行きました。それで実際に劇場で観たあらすじと私の感想をまとめようと思います。
始めは主人公である菊入正宗とその友人4人で部屋で勉強していたところ外で巨大な爆発音がします。外を見ると工場が爆発して燃え上っていました。
その光景を食い入るように見つめる4人ですが、さらに大きな爆発が!と言ったところで最初のシーンに戻ります。印象的でした。
正宗のモノローグ曰く「なぜかは分からないが何が起きたか分かった」とありました。
この時点でループ物か!と思いましたがそうではありませんでした。
この瞬間に正宗、ひいては正宗の住む町の住民すべてがその瞬間に現実世界から切り離されて閉じ込められた…というよりはタイトル通りまぼろしになったという世界観です。
正宗たちの時は止まり成長することはなく同じ時間を延々と過ごす…そういった世界での少年少女の恋の衝動をテーマにしています。
ちなみに現実の世界は普通に存在しており、そこにも現実世界の正宗たちが居ます。ただ現実世界は正しく時を刻み進んでいます。時折正宗達が閉じ込めれたまぼろしの世界がひび割れるとそこから現実を見ることができます。
ただしひび割れは「神機狼」と呼ばれる巨大な煙によって修復されます。この煙は世界を維持するために必要なものであるということが後に分かります。
まぼろしの世界では変化を起こしてはならない、もっと言うと強い感情に揺らされると自身がひびが入ります。その際に修復のためにやってくる神機狼に飲み込まれると消えてしまいます。完全に世界から消滅することになります。
(その方が良いのでは…と思ったのは秘密…)
そのため住民たちは皆自分が変わっていないことを確認する書類を律儀に書き続けているという妙な習慣があります。
うーん…これに似た世界観のアニメを知っていますね…
Sonny Boyですかね。思春期の少年少女の恋と心の成長をテーマとするとその点も少し似ている気がします。もっとも、まぼろし工場の方は住民が異能力に目覚めていることもないです。
世界観に関しては割と前半部分で説明がなされます。物語が動き出すのは主人公である正宗がヒロインである佐上睦実に工場に連れられある少女に出会うことから始まります。
出会うのは五実です。出会った時点では名前すらなく正宗が名前をつけます。
彼女は製鉄所、つまり工場に閉じ込められておりまともな教育を受けていないせいで完全な野生児です。ですが体は成長します。つまり時が止まっていない存在です。
余談ですが、まぼろしの世界に居る人間は時が止まっているため成長しません。作中では妊娠中であともう少しで出産と言う女性もまぼろしの世界に閉じ込められておりあまりにも悲惨すぎると思いました。
彼女は現実の世界からまぼろしの世界に紛れ込んでしまった人間なのです。現実世界では神隠しに会っているということになっていた模様です。
この世界の住人というか悪役?的立ち位置のヒロインの父親である佐上衛はそのことを見抜き同時に彼女の感情の暴走がまぼろしの世界を崩壊させることを直感で理解して幽閉したのですね。ここらへんは理屈ではないっぽいです。
ちなみにクソだな~と思ったのはこの事実を知っていた他の大人たちも世界が壊れたら困るため幽閉に加担しています。主人公である正宗の父親とその叔父もです。
なお…正宗の父親はこの事実に耐えられなくなり自我が崩壊して神機狼に消されています。
作中では特に明言はされていなかったのですが、恐らく主人公たちとその他住民は五実の成長具合から見て少なく見積もっても4~5年以上はまぼろしの世界で過ごしているのではないでしょうか?
時々描写される現実世界ともし時間の流れが同じなら10年以上は過ごしているとも考えられます。
そんな時も体の成長も止まった世界でも正宗を含む少年少女は心が変わっていきます。誰かに恋をします。それも何てことがないきっかけで。どんな世界でも変化はあります。
それは正宗、睦実、五実も例外ではなく三角関係のもつれで五実は感情を爆発させます。
それがきっかけで世界は崩壊に進みます。神機狼も出てこなくなり終わろうとする世界の中で正宗は父親の残した日記を目にします。
そこにはどんなに進まない世界でも絵を描き続けた正宗が絵が上手くなっていることが書かれていました。
成長なんかしないと思っていた正宗ですがそんなことはないことに気づかされます、同時に現実世界で時が進んでいても心の時が止まった人達が居ることに気づきます。その人達のため、なにより五実のために五実を現実世界に帰すことを決断します。
睦実も三角関係にしっかりとケリをつけて五実を送り出します。
映画の最後でまぼろしの世界がどうなったかは分かりません。そこでこれからも生きる正宗達がどう過ごしているのかも。でも現実世界で成長した五実が工場に足を運んだところでエンドロールでした。
内容自体は淡々と描写すると上記な感じですが実際には登場人物達の感情の揺れ幅がとても良いです。停滞している世界だとしても心の成長が止まることなく変化し続けることをうまく描画されていると思います。そして感情の動きは必ずしもいい結果ばかりではないこともまた良いですね。
万人向けの映画かどうかと言われると…ちょっと微妙ですね。
時が止まってしまった思春期みたいなテーマでありかなり賛否は分かれそうではあります。
ただセカイ系であることは間違いないのでそこらへんが好きな人には刺さると思います。
(これ言ってしまうとなのですがアニメ映画の「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」に雰囲気は似ています…)
最後に…
アリスとテレスは出てこないです。