「凪の恋」を読了しました!実績はなしで読了までのプレイ時間は約6時間ほどです。
結論から言って素晴らしい物語でした。ボリュームはそこまでないにも関わらず1つの上質な短編小説を読み切った時のような充足感と放心を味わえます。
タイトルから二つの恋の物語のどちらからか読み進める形式です。どちらから読んでも大丈夫です。二つ読み終えることで真の本編に移る形式のビジュアルノベルです。選択肢は1つのみ。以下はネタばれあり感想なため読み進める際はご注意ください。
ネタばれあり感想
二つの恋の物語があり、1つは「彼岸花ノ章」で名門の家に生まれた主人公マサヒデとマサヒデに嫁ぎに来たサハナの馴れ初めが描かれる物語です。互いに家のために出会い関係を築く二人ですが互いの想いをぶつけ合い少しずつ使命から恋、そして愛へと変わっていく様が丁寧に描かれています。
物語の舞台となる世界は日本風の世界です。日ノ和は日本(あるいはアジアそのもの?)がモデルでダストル帝国は欧州がモデルでしょうか。この章はまさに政治を舞台にしていることもあり血生臭さもある章です。
主人公のマサヒデは出自のせいもあり序盤から自虐が強いというか端的に言うと苛つくのですがここを耐えられるかどうかがこの物語を楽しめるかどうかの分岐点になりそうです。「凪の恋」という物語を最後まで読むとこのマサヒデの性格が割と話をややこしくしているよな~とは思わずにいられませんでした。サハナは誇り高く凛とした女性でこのサハナの心が変わっていく様こそが見どころの1つでもありました。
もう1つは「睡蓮ノ章」で浜に打ち上げられていたカイという記憶を失った主人公とカイを助けたスイリンの馴れ初めが描かれる物語です。主人公のカイという名前はスイリンが名付けました。
この章は記憶がない主人公なためプレイヤーに近い感覚で物語が進行し専門用語もあまり出てこなくて読みやすいです。スイリンは天真爛漫で記憶を失った何者でもないカイを助け支えていく様は読んでいて心温まります。カイもカイで記憶を失いながらも文字の読み書きや交渉術に長けている才があることが分かり村に来る商人と交渉することで村を豊かにしてスイリンだけでなく村の人達にも受け入れられていきます。やっぱり文字の読み書きや基礎教養は武器になるっすね!
順風満帆なだけありその揺り戻しも凄く、スイリンの父親は病により亡くなってしまいます。カイは自分を助けてくれたスイリンに惹かれていてスイリンもカイに惹かれていますがカイが記憶を取り戻したら居なくなると思っておりカイの想いを受け入れないのですが、自分を助けてくれて受け入れてくれたスイリンを記憶を取り戻しても決して一人にしない共に生きると誓い二人は結ばれます。
…とまあここまで読むと大体予測がつくのですが、そう主人公であるマサヒデとカイは同一人物です。時系列的には彼岸花ノ章→睡蓮ノ章になるということになります。マサヒデはお家の勅命を受けてサハナと共に外国へ向かう際に船上にて襲撃を受けてマサヒデは船から落下しスイリンのいる村に流れ着いたという流れです。
運命のいたずらというか悲劇なのはやはりマサヒデが自分が誰かもわからないレベルで記憶を失ってしまったことでしょう。とはいえ個人的な解釈としては二つの章を読んでいて思ったのですがマサヒデは本質的な部分でそもそもが政治向きではなく商人向きなのだろうなとは思いました。ぶっちゃけお家の政治的使命が相当なストレスでそれが原因で記憶を失ったのでは…と思わずにはいられない。(こなみ
「彼岸花ノ章」でウジウジはなくなっていたものの、サハナに対する後ろめたさみたいな描写が相変わらずありサハナに関してまで記憶を失われているのは割とサハナに同情してしまいます。こんな感想は野暮ですがマサヒデも記憶を失っているとは言え受け身だったサハナとの関係に対してスイリンにはかなり積極性を見せていたので素のままのマサヒデ(カイ)としてスイリンに惹かれていたのだと感じました。加えて言えば庶民としての暮らしが肌に合っていたのかもしれません。
当然こうなると本編にてマサヒデ…いやプレイヤーに対し終盤にて究極の選択を迫られる訳です。家も故郷も誇りもサハナもあらゆるものをすべて捨ててでもスイリンを選ぶのか?決してスイリンを一人にしないと誓ったのにサハナを選ぶのか?物語を丁寧に読んできた人ほど心に来る展開でした。
まあゲームなのでどっちも読むことになるのですが、このビジュアルノベルの最大の魅力はここまでしっかりと下地を作った上でドラゴンクエストⅤのように選んだほう、選ばれなかった方でそれぞれの結末があり両方とも救われるエンドがないことだと思いました。
どっちも読んだ上でどちらが正しいとか間違っているとかはまったくないのですがドラゴンクエストⅤでビアンカ、フローラ論争があるようにこれもそういう論争ができそうです…
あくまで私個人の感想としてはもう一度記憶をなくしてプレイしたとしてもスイリンを選ぶと思います。「睡蓮ノ章」を読んだらスイリンを一人になんかできねぇよ…😭
スイリンを選んだ際のサハナの最後のシーンはかなり心に来るけど神の視点で見るならサハナは食うにも生きるにも決して困らないだろうからあの後どうするかは愛に準ずるかどうかだけどスイリンはカイがいなければ本当に天涯孤独だと思うと…胸が締め付けられる…
(ドラクエⅤとの決定的な違いは不可抗力とはいえどっちとも関係を深めてしまっているという点で究極の二択を迫られるところか…)